ツイッターを見ていたら「6月になってSNSでネガティブ&攻撃的な投稿が増えた気がするので、『不快』というワードをGoogleトレンドで調べる」という試みをしている人がいた。
Twitterを眺めていると、ここ数日ネガティブだったり攻撃的な投稿が増えてきたなーという印象があったんだけど、きっとぜんぶ梅雨のせいだね。ためしに、Googleトレンドで「不快」と検索してみたら、見事に6月付近でスパイクが立ってる。イライラしてる周囲も自分も、ぜんぶ梅雨のせいにしてしまおう。 pic.twitter.com/78e24fq4qE
— 中川悠|顧客の習慣デザイン (@younaka) 2019年6月11日
その結果は面白く、見事に毎年6月前後に「不快」というワードの登場回数が急増している。
Google調べなので、つぶやきではなく検索回数を中心としたデータだが、ここまではっきりと6月前後に「不快」が増えるのは面白い。上記つぶやきの作者は「梅雨のせいでイライラしている人が増えているに違いない」と結論づけていた。
だが、冷静に考えてみると僕らは一年のうち、梅雨付近にだけ聞く言葉がないだろうか?
そう、「不快指数」である。
気温と湿度の相関で導き出される不快指数(THI)は、梅雨~夏の間だけニュースサイトやニュースで紹介されているのを見る言葉だ。上記のGoogleトレンドのグラフは純粋に現状を「不快」だと思っている人々の検索ログだけではなく、「不快指数」について書いたり調べたりしている人のログも拾ってしまっている可能性はないだろうか?
そこで、「不快」の検索結果から「指数」を除外して調べてみた結果がこれだ。
一年を通じて「不快」に関するトレンドはかなり一定になってしまった。このグラフから「6月は不快が多い」と結論付けるのは難しいかもしれない。
念の為「不快指数」という言葉を調べて、はじめのグラフと重ねてみたのがこちら。
赤が「不快指数」、青が「不快」の話題度だ。
これを見ると「不快指数」が頻繁に世の中で使われる時期と、始めのグラフで「6月に不快が増えている!」と見えていた部分は完全に一致していることがわかる。
つまり、きちんと調べてみると「6月に人々の不快が増えている」という事実はそこまで顕著ではなく、「6月には不快指数について言及されることが増える」という結論が正しかったのである。
蒸し暑い毎日だが、当初想定されたようにイライラしている人が増え、世界が「不快」に満ちていたわけではなかった。平和で良かった。
そう思いながら最後にGoogleトレンドの最長期間、2004年から2019年までの15年間の「不快」の登場回数を調べてみた。
あれ、増えてない?
2004年から15年間。世の中で確実に「不快」の話題が増えているように見える。数値にして実に3~4倍の激増だ。誤差の無いように「不快指数」の登場も除外してあるがこの結果。
いや、そもそも「検索の絶対数」が増えたからこう見えているだけでは?
そう仮定して、不快の反対語「快適」を調べてみた。これも同じように増えていれば何も心配することはない。
明らかに減ってる…。
減ってた。検索ユーザーの絶対数は増えているのかもしれないけれど、世界から「快適」は明らかに減って、「不快」は明らかに増えていた。
僕はブロガーだし、普段からポータルサイトでニュース記事のクリック率などを見る仕事だが、快適な内容の記事よりも不快な内容の記事のほうが多く読まれる傾向は確実にある。『サピエンス全史(ユヴァル・ノア・ハラリ著)』にも書かれているように、人類が猿から進化する中で、「不快な内容に強い注意を示した種族」のみが危機を回避して生き残ってきた側面は否めないので、ある程度ネガティブな内容に人々の意識が集中するのは仕方のないことなのだろう。
だが、それにしても増えすぎている気がする。ヘイトスピーチに限らず「ネットが窮屈で、居心地が良くない」と言われることが増えている昨今だが、それを裏付けられてしまった気がしたGoogleトレンドの結果。
今後は、じわじわとネットで増加する「不快の気配」から、離れる方法も考えなくてはいけないかもしれない…と感じる昨今である。