僕秩はてな

才能について考えたりしています。

1年間バーチャルYouTuberをやってみた話(ヨシナガ @dfnt 顔川ルイ)

 

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仕事履歴ブログにも書いたが、2018年は完全に名前を出さないステルスな活動に挑戦した年だった。

 

周りの人からは「ヨシナガ、最近は何も活動してないな~」と見えていたことだろう。そんなステルス状態から1年が過ぎ、状況も激変しつつあるので記録として書いておきたい。

 

 

 ■大型VTuber案件をお受けすることに

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発端は2017年の秋。個人仕事として「デジタルのアイドルグループをYouTubeで展開するので企画や台本のアイデアを出してほしい」というお仕事がきたことだった。まだVTuber(バーチャルYouTuber)という言葉が存在していなかった頃だ。

 

今も続くこの大きめの仕事は、スタッフクレジットに僕の名前は公開されていないステルス案件。僕の名前は出ないが、時代的にVTuberという言葉が騒がれる前段階だったのもあり「CGのキャラクターがYouTuberをやる」という内容に面白さと可能性を感じてお受けすることにした。

そして上記の準備を進めていた2017年の12月ころ、バーチャルYouTuberという言葉は一気にトレンドワードになり、秋の段階で10人ほどしかいなかったキャラクターは「一日に何体も増える」というバブル状態になる。

とにかく、時代が来ている感がすごかった。

 

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https://markezine.jp/article/detail/29018 より引用

 

 

■自分もVTuberになってみる

 

その中で、「VTuber関連の仕事をしっかりとこなすには自分でやってみないとわからないことが多いのでは?」という思いが日に日に膨らみ、自分でも1体作ってみることに決めたのが2018年2月中旬。この時点で毎日数体のVTuberがデビューし、国内のVTuberは200体以上に増えていた。

 

 

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CGソフトに付いているデフォルトのキャラクター(上)を利用してYouTube配信すれば翌日にでも開始することができたが、万が一人気が出た場合の権利問題などを考えて、新キャラクターを自作することにした。(後述するが、この判断は完全に間違っていた)

 

 

VTuber界は美少女以外がほとんど目立たない世界。やるなら美少女しか無い。僕としては非常に苦手なジャンルだが、とりあえず2010年ころからネタとして温めていた

顔川ルイ=顔が悪い」という名前を使うことに決めた。

 

 

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これは2013年11月のテストスケッチだ。造形をどこまで崩すかで迷って試行錯誤していたが、見せた全員が「気持ち悪い」と怖がったのでお蔵入りになっていた。(同じような造形のエヅプトくんはこの半年後にリリースになった)

 

 

それから4年以上経ったので、とりあえずもう少し人間に寄せた新規のキャラ絵を作った。

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【顔川ルイ:2018年2月初稿】

ファンに怒られそうだが、目はヴァイオレット・エヴァーガーデンを見ながら描いた。絵がヘタ過ぎたので誰も気づかなかったのが救いである。

 

絵ができた後はボイスチェンジをする方法の検討と音響機材の購入、そして自分の顔をトラッキングしてCGキャラに当てはめるシステム「facerig」の導入とアバター作成方法(Live2D)を勉強することに。やることは山積みだ。

 

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あまりの気持ち悪さに大爆笑しながらフェイストラッキングしているところ

焦りはあるものの僕は会社員なので勉強の時間は夜にしか取れない。
とりあえず音声ソフトとCGソフトの両方を一週間ほどで覚え、自分の描き下ろしたイラストを動かすところまで到達した。(2/21ころ)

 

 

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デフォルトのキャラクターをベースに目や髪の毛を書き換えて新キャラを作れば、破綻のない完璧な美少女ができるのだが、それでは世の中の200体に太刀打ち出来ないので、敢えてモーションを破綻させ、「顔の悪さ」に特化した気持ち悪いキャラクターとした。

 

YouTubeチャンネルツイッターを作り動画を編集。第一弾動画を公開したのが2018年3月1日。世の中のVTuberは517体まで増えていた。

 

 

 

■わかったこと


動画をいくつも更新してみてわかったのは

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・旬な業界だけあって、反応が多い(海外からもバンバン来る)

 

 

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・ファンアートもたくさん描いてもらえた

 

・女性VTuberに極端に人気が偏るため、男性はつらい

 

・声が超大事だった。ボイスチェンジのかすれ声は自分でも聞き苦しく、心地よく動画を見ることができない

 

顔が気持ち悪すぎて、一定以上の需要がない

 ということ。

 

一方、フォロワー層の人物像や空気感、YouTubeの現在のトレンドなどがわかったのは非常に勉強になった。

 

見た目が衝撃的だったのでニュースにもなった。

 

 内容的にも「天才ww」と褒められたり、「顔川ルイの中の人や声優は誰?怖いけどプロフィールや正体は?」のような解説ページが作られたりしたが、顔川ルイでこれ以上数字を伸ばすのはどう考えても限界があった。

 

顔も歪んでいるし、なにより気持ち悪すぎるのだ。

 


さらにネットは先行者利益が極端に大きい世界。
急拡大中のサービスや業界では内容の面白さよりも、「いかに早く始めたか?」が重要になることも多い。

 

VTuberに関して言うと、現在TOP10に入っているキャラの中の人たちの話を聞く限り

・VTuber界のTOP競争は2017年12月前半(10日ころ)に終了していた

ということがわかった。3月1日の参入では手も足も出ない速度感。

 

 


そして、僕よりも早く、全く新規に絵を書かずにソフトに付属しているデフォルトのアバターでチャンネルをオープンしていた人たちの中には大きな成功をする人も複数誕生していた。

 

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チャンネル登録18万人で、現在国内18位の「バーチャルおばあちゃん」は顔面追跡ソフト「facerig」を購入するとついてくるデフォルトアバターだ。(もちろんここまで人気なのは内容が面白いからこそだが)

 

こちらのバーチャル美少女YouTuberねむさんも、見ての通りデフォルトアバターそのままである。

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そして彼女の現在のツイッター画面はこちら。

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人気が出た後、イラストを新規に書き起こしたのだ。それで良かったのである。

カイジや福山雅治さんの画像で人気になったあと、イラストを似たものに作り変えた人たちもいる。

 

 

とにかく、「権利がクリアなキャラを自作で完成させるまでは公開しないでおこう」という僕の考えは完全に間違っていたと気付かされる出来事だった。

 

「規約や法に多少触れていても先に出した者が勝つ」というのはGoogleストリートビューの登場時もつぶやいた覚えがあるが、とにかくルールが書き換わり続ける不確定な時代の勝ち筋の一つなのだろう。

 

そういえば、かつて僕のブログが日に5万~10万と多くの人が見るようになっていった時もそういう部分があったことは否めない。 

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2003年当時で1000万PVを記録した「リアルへぇボタン」

いつの間にか守るものが増えたり、20歳の頃のようなグレーなラインを踏めなくなっていたのかもしれない。

 

僕も大人になったなぁ…。

 

 

勝負はついた…はずだったのだけど


顔川ルイ運用から一ヶ月。

世の中のVTuberは1300体まで増え、勝負はついたように思われたので、4/1にエイプリルフールのサプライズ動画を公開して一旦更新はストップするつもりだった。僕は昔から挑戦している回数も多いが、見切りも非常に早いのだと思う。

 

 

 サプライズ動画は「ルイの声がルイじゃなくなる」というネタで、気持ち悪いボイスチェンジャーではなく本当の女の子の声になるのがウリ。

全く外部には公開していなかったが、いくつかの不思議なタイミング * が重なり、中の人は友達のプー・ルイというアイドルに演じてもらうことにした。動画上の顔川ルイの動きもプー・ルイである。*このタイミングのことは別記事で詳しく書きます

つまりこの動画では「ルイの声がルイではなく、別のルイになっていた」のである。(ややこしい)

 

 

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ちなみにこの動画の更新は、3/31の22時半まで松戸でポリポリクラブ「青春!ゲームジャム」のニコ生放送をやった後、打ち上げをお断りし(バーチャルYouTuberをやっていることは、本当によく会う一部の人以外にはカミングアウトしていなかったので、申し訳なかった…)、駅構内のホームを歩きながらノートパソコンを広げてアップロードを完了させた。

 

 

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2018年4月1日0:00頃、駅構内にて撮影

 

携帯のテザリングで動画をアップするのに時間がかかり、更新は本当に0時ギリギリだった。僕秩毎日更新時代にはよく行っていた行動で、懐かしさもあった。

 

以上が僕の「2018年にバーチャルYouTuberをやってみた話」である。

 やはりいくつになっても新しいことを学ぶのは面白いし、挑戦はたとえ失敗したとしてもワクワクする。

 

と、そもそもここで終わるはずだったのだが、いろいろと予期せぬことが起こり現在も顔川ルイのアカウントは動いている。

 

次回は、この前後に起きていたYouTuber(新生YouTuber研究会BYS)関連の話を書きたいと思う。