今日は公式ホームページによると「一本の糸からさまざまなアートを生み出す知的障害者の人々」を取材したもので、さまざまな作品と作者について施設長の福森伸さんと詩人の蜂飼耳さんがコメントする内容だった。
本当にすばらしいアート作品がたくさん紹介された良い番組だったのだが、一つだけ気になる部分があった。
ニャンちゅうである。
それは、糸が複雑に絡まったような生命力のあるアート作品を作る溝口ゆかりさんを取材する部分のことだった。
カメラの前で一心不乱に糸を縫い合わせた塊を作った溝口さんが、青と黄色の完成作品を手渡しながらこういったのだ。
「ニャンちゅう!」と。
まさかのニャンちゅう。
取材者は聞き取れなかった、というよりニャンちゅうを知らなかったらしく、「ニャンコ…?猫?」と聞き返し番組は進んだ。
だが僕らは知っている。あの青と黄色の塊は、おそらく溝口さんの中では「ニャンちゅうワールド放送局」のニャンちゅうなのだろう。他にそんな色の猫はいない。
ところがその後、誰も「NHKのニャンちゅうと同じ色ですね」と指摘することはなく、あれは「猫」だったということになった。
そしてあの色や造形を「猫」と名付ける感性の凄さが説明され、詩人の蜂飼耳さんは
「この作り方は詩が生まれる瞬間に近い」
「本人にとってもなぜその言葉が浮かぶのか説明できない」
「これは溝口さんにとって糸でできた詩である」
と語った。
テロップには「内側から湧き出た作品が見る人の心を捉える」と表示されている。
たしかにそうだ。たしかにそうだが、あの作品の色使いに関しては内から湧き出た衝動ではなく、ニャンちゅうそのものだった気がする…。まさかの二次創作。
果たして、出演者とNHKの関係者全員がニャンちゅうを知らなかったのか、それとも、何らかの事情で触れることができなかったのか。
そんなドキドキを感じながら、
「とりあえず、溝口さんがあの場で作ったキャラクターがミッキーマウスではなくて本当に良かった…」
そう思った日曜美術館だった。
世界は今日も優しく、美しい。