僕秩はてな

才能について考えたりしています。

「風来のシレン6」が想像以上に良かったので感想メモ

風来のシレン6の最終ダンジョン「とぐろ島の神髄」をクリアした。


今回のシレンは期待を超えてすばらしかったので、誰の得にもならないけど、自分用として体験メモを残しておきます。


※5000文字を超えるキモすぎる長文になってしまいました
※著者は22年前の「アスカ見参」ハイスコアキャンペーンで全国で561番目のマニアになるくらいの適度な不思議のダンジョン好きです


■発売前の思い

・14年ぶりの新作。スタッフの勘や年齢は大丈夫なのか、3Dは大丈夫なのか

・シレンシリーズにお布施するため、一番高いセットを予約

・3Dはシレン3、トルネコ3でテンポを落としてしまったのでそうなりませんように

・伊集院光さんのファミ通コラム。発売前にソフトをもらい体験した感想が「初代や2の方がいい」というもので不安に

画像は週刊ファミ通 2024年1月11・18日合併号より引用

→完全に杞憂だった。伊集院さんは自分でも「保守派老害おじさん」と書かれているがきっと忙しかったりお年を召したりして、あまりきちんと遊べていなかったのだろう。システムが変化するのは悪いことではない。

・ディレクター櫻井啓介さん、生放送を見ると緊張してあまり喋れていないけど大丈夫なのか…!

電撃ゲームライブ2023年末スペシャル第3夜より引用

→完全に杞憂だった。ゲームは素晴らしかった。本来ディレクターが放送に出て喋る必要はないので、少しでもプロモーションするために慣れない生放送も頑張って出演してくれたのだろう。感謝。


・予約特典がレンチキュラって大丈夫なのか。僕は好きだが、一般に刺さらないのでは


・主人公が巨大化するシステムの名前が「ドスコイ状態」。同じ時期に同じコンセプトで発表された巨大化、壁破壊などができるマリオは「ゾウマリオ」とキュートなのに、相変わらずシレンのネーミングセンスはおじさんっぽさに振り切っている。
「ドスコイ状態」のほかにも「デッ怪」「ボヨヨン壁」など、令和とは思えないおじさんネーミング。(僕は好きだが、若い女性の支持は得にくいだろう)


■プレイしてみた感想


・テンポはとてもスムーズ。UIやテンポにストレスはなく素晴らしい出来。ギタンを整頓しない設定も今にして思えば「なぜ今まで無かったのか」と感じるほど自然。


・インタビューで「今作は良く死にます」と言っていたように、3Fパコレプキンの被ダメが18など、とてもピーキーな作り。やりなおし草も脱出の巻物もない(脱出はエンディング後に開放)
死なせないことに徹したシレン5は、確かに再プレイのハードルを上げており、僕が勧めた初心者の知人たちはみんなあまり死なないままシレン5から脱落してしまった。今作はとにかく倒れてもらうことを優先したのだろう。面白い調整。


・初回プレイの8Fで剛剣マンジカブラと風魔の盾が揃った。床落ちアイテムの幅を広くし、ロマンを初代に近づけたのはすばらしい(トルネコ3の床落ちは修正値以外に価値を感じにくく寂しかった…)


・一方、初代から続く合成の他、身代わり、脱出はクリア後アイテム。「合成ははじめから出てもいいのでは?」と思ってしまいそうになるがそれは僕が上級者だからだ。今作は徹底的に初心者に優しく、新しいユーザーを取りに言っている感じがする。初心者にいきなり合成を出すのはキャパオーバーになるという判断だろう。正しい。


・ストーリーやキャラの造形部分にほとんど予算を使っていない感じが本当に好印象。それでこそシレン。エンディングも大部分が1枚絵のみ。本当によく決断したと思う。

神髄の最下部には地球の裏(シレン1)や鬼の楽園(シレン2)のような少しオマケがあっても良かった気はするが、その開発予算を面白さに回したんだろう。すごい。(裏神髄クリア後に、タイトル画面が少し変わるがここにも全く予算を使っていないのが本当にすばらしい)


・壁の中のアイテム量の多さなど、今回は本当にサービス精神をすごく感じる調整。

 

・神器の仕様が本当に良い。ハクスラ的ガチャ要素だが、これがワクワクを大きく高めている。+値を厳選するためにゲームの寿命も伸びるだろう。はじめからレアな印が入ることで乱数にもてあそばれる喜びが増している。


・銀はがしの概念を考えた人すごい。呪いや封印(トルネコ3)で全部の能力が使えなくなるのはペナルティとして重たすぎるので、部分封印する方法を模索したのだろう

 

・同様に印増大を巻物にしたのが英断すぎる。アスカの風魔石は本当に手に入らなかった。

 

・推測ダンジョンの仕様も考えた人がすごすぎる。初心者が挫折する要因である「未識別」が重たすぎるので、部分的に未識別にする方法を模索したのだろう。これは初心者にも勧められるし上級者も面白い。

 

・ボヨヨン壁で分裂という仕様は本当に凄まじい。分裂の壺は強力チートすぎて廃止、フィーバーの壺は厳しすぎて使いにくい、その中でアイテムではなくダンジョンの壁でアイテムを増やすというコペルニクス的発想の転換。信じられない発想。今作は本当に仕様をデータ化して分析し、改善できるスタッフがいる気がする。(櫻井さんがその役なのかもしれない)

ボヨヨン壁は1ターンで上下左右に反射させるとアイテムが倍に増える



・突如始まる「熱狂の祭り」も素晴らしい新システム。熱狂の祭りはシレンに始めての30秒時間制限という遊びを取り入れており、大きな得があると同時にガバ(ケアレスミス)が起きやすい仕様になっている。ミスが起きてこそのシレン。


・「クロンの挑戦」もユーザーに縛りを設けることで緊張感を出してくれる。リスクとリターンの調整が絶妙。本作全体がそうだが、最終的にはユーザーの得がだいぶ多くなる仕様になっており、爽快感がすごい。(最大満腹度+30とか、剣盾+5とか、メリットが大きすぎるようにも思うけど面白い)


・ダンジョンの流れる水路もはじめは驚いたが、予想外に囲まれやすく予期せぬことが起きやすい面白いシステム。損なだけではなく逃げるのに使ったり、アイテムが流れて来るなど、メリットもあるのが徹底している。過去のカラカラペンペン(DSリメイク)とかデメリットだけの変更は何だったのか


・ドスコイ状態も得が非常に多いシステムだが、事前に売りにしていただけあって非常に練られた仕様になっていた。ドスコイ状態を維持できるかがクリアの大きな分水嶺になっており、草の満腹度回復を+2にした英断もすごいし、各おにぎりの最大満腹度上昇量、巨大なおにぎりの有用化(+5の安心感)、ポリゴンの特殊能力の深刻化など、とてもきれいな仕様のパズルを遊ばされている感じになった。


・ヤキイモの仕様も面白い。食料でもあり、食べた時に出るおならで敵も逃げ、燃えても焼けない(既に焼けている)、という複数の問題を同時に解決している。ヤキイモを食料にしよう!と思いついたスタッフはひらめきの快感があっただろう。ただ本作は海外でも売れてほしいので、5の”まがいもの道具”の時のように海外ファンは「食べるとおなら?なぜ?」となるのかもしれない。まぁ”おにぎり”がそもそも世界で通じにくいはずなのでヤキイモで良いのだろう。


・「デッ怪」も名前のダサさから不安視していたが、前作の夜の緊張感は大きすぎたので、部分的に夜にする方法を模索したのだろう。今作は以前の失敗を諦めず、部分的に変更して適切に回すのが本当にうまい。すごい仕様を書いているのが誰なのか気になる。


・遠投の罠がすごい。一見デメリットの少ないように見える罠だが、実際にマゼルン合成、壺割りで二度重要アイテムをロストした。過去作では実績解除に「遠投状態で合成の壺を投げた」というものもあったが、自分ほど慣れた人間がこれをやってしまうとは思わなかった。これを罠にしようとしたのも発想の転換ですごい。

育てたメインの神器を失う

 

・おならの罠はメリットしかない罠だが、開幕モンハウのような積んだ状況を一発逆転することが可能なとても良い罠だと思う。


・願いのほこらは本当に嬉しかった。シレン2の黄金の間が本当に好きだったので、それに近い仕様を入れてくれた事が嬉しい。ユーザーに一発逆転の大きな得を与えるのも良い。泥棒がしやすくなる副次効果まである。


・黄金街道はストーリー上にも配置してくれたのが、黄金の間的なロマンを簡単に感じることができすばらしい。


・音楽が想像を超えて素晴らしい。日本っぽい縛りがあるうえ、オリジナルがすぎやまこういちさんなので作曲者としても全力を出しにくいと思うが、モンスターハウスの音楽のジャズっぽい部分など、オリジナルを超えるポップさがあると思う。曲数も想像以上に多い。全力を感じる。(今回の特殊モンハウの曲が歴代の全曲の中で一番好きです)


・クリア後ダンジョンもシステマチックに作られており短めなので初心者に勧めやすい。「ギタン投げの逃げダンジョン」「デッ怪チュートリアル(石投げ)」など、とりあえず上級者なのでほぼ全てノーミスでクリアできた。今まで気づかなかったが、このくらいのバランスで良かったんだと思う。今にして思うと以前は初心者には理不尽で難しすぎた。


・桃まんの肉システムも良いが、個人的には「もののけ王国」の収集要素や、装備掛けのようなコレクター要素があればもっと最高だった。また、村で売ってくれる桃まんの親切さがすごい。途方も無いように見える桃まんをあっという間にコンプできた。(後半は持っていない桃まんのみを売ってくれている)


・1000回遊べるRPGというキャッチコピーなので、蔵は10倍くらいのアイテムが預けられてもいいと毎回思う。(冒険から帰還して蔵にアイテムが入らなくなった時が一番の離脱ポイント)でも多分メモリ的に大変なんだろうな。


・投擲や罠作動の確率に下方調整を入れている気がする。この確率については長畑さんがものすごくこだわっていた部分のはずで、本当に良く変更したと思う。とにかく「自然に不確定事故を起こす」試みをやり続けている印象。

攻撃命中率について語る過去インタビュー


・罠は壊れやすくなる一方、矢稼ぎの罠が壊れにくくなっている。これもユーザーのための調整。

 

・仲間を強く調整したのも初心者に優しくていい。

 

・初めて+99装備を作りたい人向けに、アイテムロストせずに忍者の隠れ里の鍛冶屋をループできるのはとても親切。価格もリーズナブル。

 

・ニギライズを全ユーザーにやらせるため、にぎり変化種の攻撃力が多少落ちているか。ドスコイ状態とも関係するので、これまで死にパラメータだった満腹度の重要度が急上昇した。そして、おにぎり変化の息のデメリットが重すぎたのでレベル1は確率で変化するように。これも今までは0/100で重すぎた仕様を部分的に変更する形。

 

・設置砲台はうまく活用することはあまりなかったが、桃まん砲台があるのには驚いた。これは壊れるまで何度も利用した。敵との戦闘を単調にしない効果はあるが、快適か?と聞かれるとこれまでの他の仕様が素晴らしすぎたので砲台は「そこそこ面白い」という感じ

 

・水龍の洞窟(狐渇シレン)も満腹度を利用したアイテム無限変化という試みが親切で面白かった。(トルネコ2のHPを利用して魔法を出す魔法使いを思い出した)

 

・HP回復速度の上昇も後半のストレスを減らす意味でとても良かった。シレン5の回復速度は遅すぎたが、それがここまでストレスになっていたとは。今作で戻してもらうまで自分では気づけなかった。

 

・99Fダンジョン、マゼルンの登場階層をものすごく広げたのが本当に英断。これまでの決まった階層は運の要素が強すぎてそこで逃すとクリアできない状態だったが、今回は実力があれば誰でもクリアに近づける良い変更。


・山伏の道具変化、暴走も良く考えたすごい仕様。買い物中に暴走したチキンに店主を倒された時は笑ってしまった。強制的に泥棒に。


・手帳一覧、店での売却価格表示など細かい改善点は全て挙げないが行き届いている感がすばらしい。わかった人が作っている雰囲気を感じる安心感。

 

■総括


今作は今までの仕様を研究し尽くし「どうやったら部分的に改善できるか」というアイデアが非常に多く盛り込まれており、多くが功を奏している。シレン好きが作った新しいシレンという感じがすごい。スタッフの年齢は分からないが若返っているのだろうか。これだけの新仕様を思いつくにはかなりの時間をかけたはずだし、とても親切なバランスにまとまっている良作。


switchで出ているのもあり歴代で最も「初心者に勧められるシレン」になっていると思うので、未体験の人もぜひプレイしてみてほしい。(絵の色気のなさや単語のオジサンっぽさで離脱してしまいそうな人も、少しだけ我慢してやってみてほしい!)


今後、追加ダンジョンや微調整が追加された「風来のシレン6+」が発売された時、それが歴代最高のシレンになるのかもしれない。

 

 

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追記:裏神髄も無事クリアしました。