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最近のハンターハンターにおける「キャラ増えすぎ問題」は意外な作品を意識していた

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前回書いた「最近のハンターハンターにおける「ストーリー練りすぎ問題」について考える」は25万人以上の方々に読んで頂き、コメントもたくさん頂いた。

その中で気になるコメントを見つけたので、今回はそれをもとに前回記事の結論である

 「冨樫さんはジャンプ史上最大人数による複雑なドラマを作ろうとしている?」 

 という推測が実際はどうだったのか?を裏付け検証したい。

 

 

該当のコメントはこちらだ。

 どうやらジャンプ本誌とコミックス以外のインタビューで、冨樫さん本人が制作の方針に言及している模様。そこで、さっそくインタビューが掲載されている商品を購入することにした。

 

買ったのは「ジャンプGIGA 2016 vol.2」と「ジャンプ流!DVD付分冊マンガ講座(21)」の2つ。

 

 

ジャンプGIGAではNARUTO作者の岸本さんと対談をしている。

前回のコラムで書いたように、冨樫さんは長期休載可能という特殊能力を持っているため、時間が足りない週刊連載作家さんとの違いは冒頭の「キャラクターをどうやって作っているか?」という話題から際立っている。

 

冨樫:新しいキャラクターを出すときは、どちらかというとまず設定。でも落書きを書いて、そこから性格が乗ってくる場合もありますね。

岸本:そうですね。余裕のあるときとないときとで、キャラの作り方が変わってくるんですよね…。連載中に切羽詰ったときは、もう、進めなきゃいけないんで、絵を書きながらその都度決めて、キャラが後で自分でもわかってくる、みたいな。

引用元:ジャンプGIGA 2016 vol.2

 

冨樫さんの時間的余裕と、岸本さんの時間に追われる感じが対照的。

どちらが良いというわけではないが、原稿作成時に3時間睡眠で週刊連載を落とさずに続けた岸本さんと、制作に300日以上を使える冨樫さんとでは、やはり制作方法にだいぶ差があるのだろう。

 

そしてこの後、王位継承戦編の登場人数の話に。

 

冨樫:今回のシリーズはシンプルに、ものすごく人数を増やしたらどうなるだろうっていうのを、とにかく極端にやってみた。

岸本:作画が大変っていうか…。

冨樫:「話ですごい人数を出した」っていう人は、尾田先生もそうだけど、今までいるんですよね。それを意識しながらあえてやって、破綻しなかったらおもしろいなと。

引用元:ジャンプGIGA 2016 vol.2

 

やはり想定したとおり、「ものすごく人数を増やす」ということを意識的に行っていることがわかった。このインタビューでは例として尾田先生(ワンピース作者)が出てくるが、このあと「ジャンプ流!DVD付分冊マンガ講座(21)」の中で、本当に目標としている意外な作品とその人数が判明することになる。

 

 

ジャンプ流は冊子&DVD&その他付録がついているセット。紙のインタビューも非常に興味深いのだが、今回はDVDの映像から王位継承戦編の制作意図について紐解いていこう。

 

決定的だったのは、DVD後半の「仕事場紹介」で冨樫さんが作業机の上のものを解説している部分。

 

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卓上に置かれた「キャプテン翼 ジュニアユース編」のキャラ一覧表を持ちながら、冨樫さんがこうコメントしたのである。

 

冨樫

私の中の記憶では、たぶん、キャプテン翼のこのシリーズが「一番ジャンプの中で名前のある人物が数多く出てた

今回のシリーズ(王位継承戦編)で、これを超えることを自分の中で裏目標にしている

 引用元:ジャンプ流!DVD付分冊マンガ講座(21)

 

明確に、ジャンプ史上最大の登場人物によるドラマを描こうとしていることがわかった瞬間である。

 

前回記事で「実際のドラマは70~80人位の人数で描かれる可能性もある」と予想したが、上記のキャプテン翼のキャラシートには70名の顔と名前が書かれている。これを確実に超えるという事は、実際には100名規模のドラマになるのだろうか。

 

 

それを裏付けるのは横に置かれたキャラの設定資料。

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各王子の従事者は15名までとストーリーで決まっているため、それを考えると最大人数は

王子14人×従事者15人=210名

となるが、劇中で全員が出てくるわけではないと思っていた。ところが卓上の設定資料を見ると、ほとんど全員に名前が決められている様子が見えるのである。

 

ここに見えるだけで、ロンギ、ベータ、キトカッタム、リュビッヒ、モミイタ、ハイゼン、コミヤ、ピタクス、エリックス、ゾメーサ、等、劇中ではモブに見えるキャラにしっかりと名前が設定されている様子が見える。今にして思えば この「15名」という数字は、キャプテン翼の「11名(サッカー)」を超えることを意識して作られたのかもしれない。

 

さらに複雑なことに、従者は15人限定ではなくハンター協会の準協会員(150名が乗船)の中にも紛れているという設定もある。例えばそのうち5名は第4王子ツェリードニヒの部下であることが明かされているため、登場人物は単純に14×15=210とは限らず、14×20=280名程度まで膨らむ可能性もある。

 

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実際、最大の兵を保有すると第一王子の設定シートには25人の部下と名前が記入されているのがわかるため、前回記事で推定した「70~80人」という見積もりはかなり甘く、実際には100~200人が登場してもおかしくないのかもしれない。ジャンプマンガとしては前代未聞の複雑度だ。

 

50人が出ている現在でも既に「難しい」という声が多い中、登場人物が100~200人超となると多くのジャンプ読者は混乱してしまい、読み続けるのが困難になるだろう。1話だけをジャンプで読んでも「何が何だか分からない」ことになりかねないので、アンケート票数も下がってしまう可能性がある。

 

ただ、今回の挑戦は「未曾有の大人数を出す」ということなので、冨樫さんの中で目標が達成されればよいのだと思う。

 

実際アンケート票数に関しては、このジャンプ流の冊子の中に「票を取らないマンガを描きたい」幽☆遊☆白書終了後、レベルEをスタートする時)とコメントした話など、創作のモチベーションに関する興味深い話がたくさん出てくる。

 

 


 

ということで、

現在の50人にとどまること無く、100名以上が登場する可能性も見えてきたHUNTERXHUNTER。

 

今後、さらに複雑になる可能性がある本作だが、読者の反応を見て登場人数を制限するのか?それとも強い信念で新キャラを出し続けるのか?など見どころは多い。

 

どちらにしても、僕は変わらず全力応援していきたいと思う。

 

 

 

 (※個人の感想と推測です笑)

 

 

 

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