オリンピックの開会式でブルーインパルスが飛ぶというので僕も空を見上げて動画を撮った。
スカイツリーの上あたりからカラーの煙を出すブルーインパルス。かっこよかった! #ブルーインパルス pic.twitter.com/0nHtY8eBPO
— 吉永龍樹(ヨシナガタツキ@僕秩) (@dfnt) 2021年7月23日
かっこいいし、少し色がついている!
教科書で見た覚えがある「1964年の開会式でブルーインパルスが描いた五輪マーク」は白だった。※色についてラストに追記あり
引用元:産経フォト
あれから57年も経っているので技術も進歩して、色を見せることが可能になったのだろう。日本の発展を感じる瞬間だ。
で、
僕の見た場所では五輪のマークは見られなかったが、2021年の技術でカラーの五輪マークが空に描かれた様子も見てみたいと思い、ツイッターやニュースを検索した。
ところが全然写真が出てこないのである。
探した結果行き着いたのが、とてもいいポジションで知人が撮影した40秒ほどの動画だ。
五輪マークも観れました🤤#ブルーインパルス pic.twitter.com/rwAkAL4hIX
— 鶴岡 祐将 (モスコミュール師匠) (@Mosco1123) 2021年7月23日
完全に失敗している…。
写真がなかったのも当然で、そもそも五輪マークは完成していなかったのだ。
雲が出てしまったのは運が悪いので仕方がないが、そもそも1/3くらい円を書いた時点ではじめの部分が消えてしまっている。動画の秒数を見ると一周30秒で円を描いているようだが、煙のキープ時間が15秒ほどしか無いのだ。
これでは仮に雲がなかったとしても1964年のようなきれいな五輪マークにはならなかっただろう。そもそも「カラーで五輪を描く」という企画時点で失敗が確定していたのか…?
だがポジティブに捉えるとすれば、これは「新しいことに挑戦をした」という事実自体に価値があるのかもしれない。
57年前と同じ技術を使えば確実に白いマークは書けただろう。ただ、進歩はいつだって挑戦から始まる。新しい挑戦を阻まれることの多い現代の日本社会で、たとえ失敗しても新しい挑戦をしたブルーインパルスはかっこいい。
そもそも、今回の煙がどうしてこんなに消えやすいのかを調べてみたところ、98年の長野五輪に端を発することがわかった。
"98年長野冬季五輪の開会式でも(中略)カラースモークを出しながら飛行した。だが、染料が地上の物に色を付けてしまうため、その後は、カラースモークの使用ができなくなっている。"
引用元:産経フォト
色の濃い煙を出しすぎると、地上に塗料が落下してしまい、家や車を汚してしまうため、カラースモークは使えなくなったらしいのだ。これが23年前。
あれから23年。"防衛省は東京五輪の開催決定を受け、カラースモークの復活にのりだし、地上に影響が出ないように改良した。"とあるので、なんとか改良を加えたのが今回の煙なのだろう。
23年の進歩。結果的に五輪を描くことは不可能だったし色も薄かったが、周辺を汚さないよう最大配慮し開発された煙だったのだ。
そもそもブルーインパルスを熟知しているスタッフから見れば今回の煙では当日の風力なども考慮すると円を描けないことはわかっていたはず。オリンピックの開会式が動画や写真で歴史的な記録に残ってしまうことを考えると
・周囲を汚すけど完璧に色マークを描く
・色を諦めて完璧な白マークを描く
のどちらかに振り切っても良かった気はするが、「全方向に忖度し配慮を欠かさない結果、うやむやな円が霧散する」それが今の日本らしい結論だったのかもしれない。
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と、開会式の日にここまで書いてブログは公開せずにいた。「ブルーインパルスかっこいい!」というワクワクから始まった調査だが、まさかのネガティブな結論にたどり着いてしまったのでこれを公開しても意味ないな…と感じたからだ。
ところが、その後行われた閉会式を見て驚いた。
引用元:NHK
いや、パリの煙よ。
完璧なトリコロール。
色もバッチリ濃いし煙も思ったより消えていない。これができるのか。そして周囲の家や文化財に塗料が落ちる問題はどうしているのか。
参考:僕が撮影した日本のカラー煙
とにかくわからないがすごい。煙だけに関して言うとレベルが違う。探すと動画も見つかったが、加工無しで圧倒的なカラーだ。
・パリは見栄えに全振りして、周囲の汚れは気にしなかった
というのが結論だと思うが、ビジュアルインパクトではすごく負けたように感じてしまう。
だが、日本は思いやりの国だ。配慮ができるのだ。
・日本は周囲を汚さないよう配慮し、見栄えは悪かったが誰も傷つけなかった
それでいいのだ。他国と比べても仕方ない。
こうしてこのブログにもややポジティブなオチが付いたかな…と思っていた矢先、最後のニュースが飛び込んできた。
カラースモークを低空で不正噴射して、周囲の車を300台汚してた…。
しかも車についた汚れは洗剤で落ちないので、塗料の塗り直しになるとのこと。
ということで、
今回の五輪のブルーインパルスの結論は
・日本は全方位に配慮した結果、見栄えも完成度も中途半端だったが、スタッフの不正で結局環境にも悪影響だった
ということになってしまった。
悲しすぎる結論だが、それも現代の日本の現状を的確に表しているのかもしれない。
それでも飛んでいるブルーインパルスがかっこよかったのは嘘ではないし、もしいつか次のチャンスがあれば、ぜひ進化した姿が見てみたいと思う。
本当にありがとうございました。
※13:30追記:詳しい方から「1964年の煙もカラーだったはず」という連絡をいただきました。実際の結果は写真の通りほとんど白にしか見えませんが、当時から色をつけた煙を噴出していたようです。だとすると、新しい挑戦も特にしておらず、「2021年は57年前と同じことすらできなくなっている」というもっと悲しい結論になるのかもしれません・・・。